目からうろこの音体験
谷水加工板工業株式会社
2016.01.26
断熱パネルや防音パネルを製造している谷水加工板工業株式会社を訪問しました。
山々と田畑に囲まれたのどかな場所に建つ工場。
このとっても静かな一帯でつくられている防音製品て?…と興味津々です。
大阪の大学で建築学科を卒業後Uターンし、祖父の代から続く会社の設計・開発者を務めてこられたキャリアウーマンです。
キレのいい関西弁が印象的。
長女の谷水さんは幼い頃から祖母に跡を継ぐよう言われてきましたが、ご本人は元々学校の先生になりたかったとか。
ただ、高校で文系理系の選択を迷っている時に、父から言われた「女性の建築士ってかっこええぞ」の一言がその後の進路に大きく影響したそうです。
「私、かっこええって言葉に弱いんですよ」と笑う谷水さん。
百聞は一見に如かず。
さっそく社内の主力製品をいくつか見せていただきました。
組立式防音室を体感
1日で設置でき、引っ越しの時も解体して運べるという組立式の防音室。
楽器の演奏や仕事部屋、趣味の部屋などとして、都心部での需要が高いそうです。
実際に防音効果を体験できるよう置いてあるピアノを谷水さんが弾いてくれました。
ジャジャジャジャーン!
谷水さん満面の笑み。
でも実は弾けないんですって。
軽快なリズムで音を出してくれました。
ピンポンタタタン…
扉を閉めると…
一瞬でピアノの音が遠ざかりました。
離れたお宅で演奏されている感じ。
これなら思う存分練習できますね。
新たな世界への参入
続いて案内していただいたのは、トラックの荷台に設置されたモデルルーム。
実は、最近新たに船舶用の防音パネルの開発に成功したそう。トラックは船内の環境を再現すべく用意されたもので、防音パネルで組み立てられたモデルルームの中で実証実験を繰り返します。
それにしても船って、まったく新しい世界に飛び込むなんてすごい!
きっかけは2013年に大阪で開かれた「中小企業総合展」。
マッチングの機会を求めて約500社が集まる展示会で出会った商社が、谷水さんが出していた不燃性の防音室を見て、船舶用パネルの開発を持ちかけたそう。
当時、IMO(国際海事機関)の船内騒音規制の改正が迫る中、防音壁の開発に名乗りを上げる企業がないことを知り、決断したといいます。
「新しいことへの挑戦が好きなのはうちの強み」と、谷水さん。
「試作品を持って造船所へ行ったときは、その壮大なエネルギーにワクワクしました」と目を輝かせます。
得意とするのは異質な材料の組み合わせ。
吸音材や遮音材の組み合わせを駆使して船舶用の遮音パネル「おとのん」を開発しました。
精密機器で〇十万円すると聞き、ひぃ〜持つ手がふるえる〜。
トラックのエンジンをかけ船内に見立てたモデルルームで、国際基準の55デシベルにまでもっていかなくてはなりません。これは室内で普通に話す声くらいのレベルだそうです。
見事クリアー!
って当たり前。すでに「おとのん」は認証試験を通り、実用化されているんです!
「いい物をつくると向こうから見に来てくれる。
国際基準が厳しくなるというタイミングは、私たち中小企業が入り込む隙だったんだと思います」と、谷水さん。
新たな挑戦の成功により、国内でトップメーカーとなるチャンスが訪れています。
音がキレイになるソファー??
最後に見せていただいたのはこちらの防音室、の中にあるソファーがなんと新商品。
特殊な吸音材を内蔵する、その名も「サウンドクリアソファー」。
不快な低音を吸音し、置くだけで室内の音をクリアにするのだとか。
百貨店からの要望をきっかけに、吸音パネルとファブリックという組合せから誕生したそうです。
おもしろーい!早速体感。
音楽をかけて閉じこもる角田。
こ、これは…!
確かに音がキレイに心地よく感じます。
でももっと驚いたのはこの後。
ソファを外に出した空間で音楽を聞くと、その差は歴然。
同じスピーカーから出た音?!と思うほど違うんです。
急に雑音が混じったような、初めての感覚。
丹波の贅沢な住環境を届けたい
「現代人は不必要な音もたくさん聴いています。聴きたい音だけを選べる贅沢を感じてほしい」と、谷水さん。静かな丹波での暮らしに幸せを感じるからこそ、都会で暮らす人にその贅沢を届けたいと言います。
「この2〜3年は開発に時間とお金をかけて、ものづくりに専念してきました。いわば種をまいて育てた期間、今後はそれをしっかり収穫すること。販売に力を入れます!」と、社長としての意気込みを教えてくれました。
開発者として、社長として、女性として、いつでも真剣勝負…かっこええ!です。
住環境の“質”を高める音の選択。気になる方はぜひ会社を訪れて体感してみてください。
谷水加工板工業株式会社 代表取締役 谷水ゆかりさん
「木の根橋。高校の通学途中にあった慣れ親しんだ場所です。」